アリス・ポール

アリス・ポール（Alice Paul、1885年1月11日 – 1977年7月9日）は、アメリカの女性参政権運動のリーダーであり、20世紀初頭における男女平等の実現に大きな影響を与えた人物です。彼女の生涯と活動は、女性の政治的権利拡大を目指した闘争の象徴ともいえるものです。

生い立ちと教育

アリス・ポールはニュージャージー州モアレストーンに生まれ、クエーカー教徒として育ちました。クエーカーの教えは男女平等を重んじており、これが彼女の思想形成に大きな影響を与えました。彼女はスワースモア大学で生物学を学んだ後、社会学と経済学を学ぶためにペンシルベニア大学、さらにはイギリスに留学し、バーミンガム大学とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで教育を受けました。

女性参政権運動への参加

イギリス留学中、アリスはエメリン・パンクハースト率いる「女性社会政治同盟」（WSPU）の活動に参加しました。WSPUは過激な手法を用いることで知られ、アリスもデモや抗議活動に参加し、逮捕されたこともありました。この経験は彼女の運動手法に影響を与え、帰国後のアメリカでの活動に活かされました。

アメリカでの活動

アリスは1910年にアメリカに帰国し、アメリカ女性参政権協会（NAWSA）に加入しましたが、組織の穏健な方針に不満を抱き、1916年に独自の組織「女性党」（National Woman’s Party, NWP）を設立しました。NWPは直接行動を重視し、ホワイトハウス前での抗議やハンガーストライキなどの戦術を展開しました。

特に、1917年から1919年にかけての「サイレント・セントリネル」運動では、女性参政権の早期実現を求め、ホワイトハウス前で無言の抗議を行いました。この活動は当時のウッドロウ・ウィルソン大統領を圧迫し、最終的に1920年にアメリカ憲法修正第19条の成立を促す重要な役割を果たしました。この修正条項により、女性は選挙権を獲得しました。

平等権修正条項（ERA）への取り組み

アリス・ポールの活動は女性参政権の獲得にとどまりませんでした。彼女はさらに進んで、男女平等を全面的に保障する平等権修正条項（Equal Rights Amendment, ERA）の制定を目指しました。ERAは1923年に初めて議会に提出されましたが、長い間議会で採択されることはありませんでした。それでもアリスは1970年代まで運動を続け、ERAが一部の州で批准される基盤を築きました。

晩年と遺産

アリス・ポールはその後も女性の権利拡大のために活動を続け、国際連合（UN）における男女平等の推進にも関与しました。彼女の努力は女性運動の基盤を築き、現代のフェミニズムにも影響を与えています。

1977年、92歳でこの世を去ったアリスは、その生涯を通じて女性の地位向上に貢献しました。彼女の名前は今日でも、平等の象徴として語り継がれています。