2021年5月20日
この切手は96年も前に発行された古い切手ですが、2色刷の素敵な切手です。
アメリカは移民の国ですが、その大きな源流となるのは1620年のピルグリムと呼ばれる人たちが宗教上の理由でイギリスからメイフラワー号で移民してきたことです。それに比べると1825年のノルウェーからの移民はずいぶん時代も新しいのですが、ノルウェーからの移民100年を祝おうという人達の働きかけが功を奏して、当時としては珍しい2種類の2色刷切手が誕生しました。
この当時の凹版印刷で2色刷りを実現するためには、それぞれの色の版で2回に分けて印刷する必要があり、しかも外側の枠と中の船の位置を合わせるために細心の注意を払う必要がありました。2ドルや5ドルといった高額の普通切手には2色刷りが使われていましたが、2セントや5セントといった額面で2色刷りが使われたのは1901年のパンアメリカン博覧会記念切手以来、実に24年ぶりのことです。
左側の2セント切手はノルウェーからの移民が乗ってきたレストレーション号、右側の5セント切手は西暦1000年ごろにノルウェーから北アメリカのシカゴ付近まで航海していたとされるバイキング船を描いています。このバイキング船については、この切手の図案を作成するときにモデルとした1893年のコロンブス博覧会で展示されたバイキング船の写真に、船首にはアメリカの国旗、船尾にはノルウェーの国旗が掲げられていたため、そのまま図案化してしまい、バイキング船に星条旗が掲げられているのは時代的におかしいというクレームが発生したというエピソードが残っています。
そんなことを脇においても、船の切手として魅力的だと思いませんか。